2025年2月26日発表のエヌビディア(NVDA)決算は、まさに“AIバブルの主役”にふさわしい内容でした。売上も純利益も前年同期から大幅に増加し、ウォール街の高い予想すら上回る結果となりました。以下では、主な数字や事業別動向、ガイダンス、そして株価への影響について、カジュアルな語り口で専門的に分析します。
決算ハイライト: 売上・利益が記録更新
- 売上高: $393.3億ドル(約5兆2,000億円) – 前年同期比+78%の急成長。市場予想の約$382.5億ドルも上回る驚異的な数字でした。
- 純利益: $220.9億ドル(前年同期比+80%) – 売上の半分以上がそのまま利益になった計算です。1株当たり利益(EPS)は$0.89で市場予想の$0.84を上回りました。驚くべき高利益率で、前年から利益がほぼ倍増しています。
- データセンター部門売上: $356億ドル – 前年同期比+93%とほぼ倍増し、全売上高の約90%を占める主力に成長。AI需要がこの部門を猛烈に押し上げました。
- ゲーミング部門売上: $25億ドル – 前年同期比-14%と減少。ゲーム向けGPUはやや一服で、市場予想(約$30億ドル)を下回りました。データセンター向けにリソースを割いた影響や、消費者需要の一巡が考えられます。
- その他部門: プロ向け映像(ProViz)は$5.11億ドル(+10%)で概ね予想通り。自動車関連は$5.7億ドルと前年の2倍超に伸び、予想($4.6億)も上回りました。
これらの数字から、NVIDIAがいかにAIブームで荒稼ぎしているかが分かります。では、項目ごとにもう少し詳しく見ていきましょう。
売上高・純利益: AI需要で桁違いの伸び
今期の売上高は前年同期から78%増の約3,933億円(ドル換算で$393億ドル)に達し、過去最高を更新しました。市場コンセンサスも強気でしたが、それすら軽々と上回る結果です。背景には後述するAI用途の半導体需要急増があり、「売れば売るだけ在庫が捌ける」ような状況が続いています。
純利益も約$221億ドルと前年のほぼ2倍に跳ね上がりました。売上総利益率(グロスマージン)は約73.5%と引き続き高水準で、研究開発費を前年から50%以上増やしつつもこの利益率を維持しています。結果、売上の半分超が丸ごと最終利益になるという、常識破りの高収益性を叩き出しています。まさに「AIチップでドルを刷っている」と言っても過言ではないでしょう。
前年同期比で見ると成長率78%と驚異的ですが、実は前四半期(+94%)や前々四半期(+122%)に比べ伸び率自体はやや鈍化しました。それでも通常の大企業では考えられない高成長ぶりであり、市場の期待が依然として極めて高いことを示しています。
データセンター事業とAI関連収益動向
今回の決算の主役は何と言ってもデータセンター事業です。売上は$356億ドルと前年のほぼ2倍(+93%)に急増し、NVIDIAの売上構成の大半を占めました。クラウドプロバイダーや大企業が生成AIや大型AIモデルの開発・運用にこぞって投資しており、高性能GPU(例:H100など)を「のどから手が出るほど欲しがっている」状態です。
NVIDIAのCFOコレット・クレス氏も「AIへの需要拡大は今後10年以上続く」と述べており、企業のIT予算でAI関連支出が急増すると見込んでいます。この発言通り、AIブームがNVIDIAの成長エンジンとしてフル回転していることが数字に表れました。
一方、ゲーム向けGPUなど従来の主要分野は陰に隠れています。ゲーミング部門の売上高は$25億ドルと前年から14%減少し、市場予想にも届きませんでした。パンデミック期や仮想通貨ブームで盛り上がった需要が落ち着いたことや、NVIDIAが生産リソースをAI用途に振り向けたことが一因と考えられます。しかしNVIDIAにとっては痛手ではなく、限られたGPUをより収益性の高いデータセンター向けに売った結果とも言えるでしょう。実際、データセンター向け製品は供給が追いつかないほど売れており、ある意味うれしい悲鳴です。
その他、プロ向け映像処理や自動運転向けチップも増収傾向にありますが、その規模は数億ドルレベルと桁違いに大きいデータセンター事業の前では霞んで見えます。要するに、現在のNVIDIAの業績はAI関連需要一本足といっても過言ではなく、同社の将来はこのAI需要が握っている状況です。
強気のガイダンス: 成長はまだ止まらない?
NVIDIA経営陣は、次四半期(2026年度Q1)の見通しも強気です。売上高ガイダンスは約$430億ドル(±2%)と提示され、市場予想の約$417.8億ドルを上回りました。これは前年同期比で約+62%の成長を見込む数字で、現在のAI需要が少なくとも向こう数ヶ月は衰えないと読んでいることになります。驚異的な伸びを経験した後でもなおこの成長率を維持する見通しには、投資家も思わずニヤリでしょう。
加えて、GAAPベースの粗利益率は70.6%程度を見込んでおり、高い収益性も維持する構えです。つまり、「売上もまだまだ伸びるし、利益率もバッチリ」というわけです。これは半導体業界では異例の強さで、供給制約が緩和されればさらなる売上上振れ余地すらありそうです。
もちろん注意点もあります。最近、中国のスタートアップが低コストな大規模AIモデルを発表し、高価なNVIDIA製チップへの需要減少懸念から同社株が急落した出来事もありました。また、AMDなど競合もAIチップ市場への攻勢を強めています。しかしNVIDIAは新世代GPUアーキテクチャ「Blackwell」の投入も控えており、引き続き技術優位を維持する見通しです。実際、主要顧客であるMicrosoftやAmazon、Google (Alphabet)がこのBlackwell採用を見据えており、後半には需要が再加速するとのアナリスト見解もあります。要するに、当面は成長ペースが多少落ち着いても、長期的なAI需要の追い風は依然強力だと言えそうです。
株価への影響: 好決算なのに意外と冷静?
これだけの「ぶっ飛び決算」でしたが、発表直後の株価反応は意外と落ち着いていました。決算発表を目前に控えた26日には株価が約+3.7%と上昇し、マーケットの期待感を反映していました。しかし、肝心の結果発表後、時間外取引では株価が一時2%ほど下落する場面もありました。「予想通り良すぎて逆に売られる」という典型的なパターンで、短期的には材料出尽くし感や利益確定売りが出たようです。
実際、NVIDIAはここ数四半期、予想を上回る幅(サプライズ)が徐々に縮小しており、市場のリアクションも穏やかになりがちです。今回も結果は文句なしに強いものの、「それぐらいは織り込み済み」と見る向きもあったのでしょう。それでもガイダンスが予想以上に強かったことから、アナリストたちは業績拡大が持続する安心感を得たはずです。決算発表後の電話会議でも次世代GPUや需要動向について言及があれば、マーケットのムードは再び前向きになる可能性があります。
長期的に見れば、NVIDIAはAI時代のコアプレーヤーであり続けるとの見方が大勢です。株価は過去5年で18倍にも急騰し、同社の時価総額は一時3.2兆ドル(世界第2位)に達しました。現在株価収益率(P/E)は予想利益の28倍程度と、一年前の36倍から低下しており、これは利益の急増で“割高感”がやや解消されたことを意味します。要するに、業績が追いついてきて株価の土台が強化されている状態です。AIブームの持続とともに業績が積み上がれば、株価のさらなる上昇余地も十分あるでしょう。
まとめ:AIバブルの恩恵で快進撃、今後も目が離せない
今回の決算は、エヌビディアがAI需要の爆発的増加をいかに収益に結びつけているかを如実に示すものでした。売上・利益は予想以上、データセンター事業は圧倒的な牽引役、そして今後のガイダンスも強気とくれば、投資家としては嬉しい限りです。短期的な株価の揺れはあっても、この企業が現在のAI革命の中心にいることに疑いの余地はありません。
NVIDIA自体も「AIの進化はこれから10年以上続く」と長期の成長機会を強調しており、まさに“AI時代の勝ち組”として快進撃を続けています。今後もデータセンター向け需要の動向や、新製品(Blackwell世代)の投入タイミング、そして競合他社の動きなどに注目が必要です。とはいえ、今回の決算を見る限り、エヌビディアは当面盤石の業績ドライブを続けそうです。投資家にとっても、引き続き注目と期待の銘柄であることは間違いないでしょう。
(注): 本分析は2025年2月26日時点の決算発表に基づいており、数値は主に米ドル表記です。今後の市場動向によって株価は変動し得るため、投資判断は自己責任にてお願いいたします。
免責事項
- 本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の銘柄の売買を推奨するものではありません。
- 記事中の数値や見解は執筆時点の情報に基づいており、内容の正確性や完全性を保証するものではありません。投資判断は自己責任で行ってください。
- 記事の内容は将来の株価や業績の見通しを示唆するものではなく、市場環境の変化などにより実際の結果は大きく異なる場合があります。