1. 財務情報の詳細分析
① 収益と利益
- 営業収益: 10兆497億円(前年同期比 +3.4%)
→ 過去最高を更新 - 営業利益: 1兆3,992億円(前年同期比 -5.9%)
→ 減益 - 当期利益: 8,507億円(前年同期比 -15.9%)
- EBITDA: 2兆5,525億円(前年同期比 -0.7%)
② セグメント別の業績
セグメント | 営業収益 (億円) | 営業利益 (億円) |
---|---|---|
総合ICT事業 | 4兆3,704 | 8,339 |
地域通信事業 | 1兆7,902 | 2,956 |
グローバル・ソリューション事業 | 3兆2,621 | 2,360 |
その他 (不動産・エネルギー等) | 6,269 | 547 |
- 総合ICT事業が収益の最大割合を占める。
- グローバル・ソリューション事業の成長が目立つ。
- 地域通信事業はやや減速。
③ 財務状況
- 総資産: 30兆6,034億円(前年同期比 +9,991億円)
- 株主資本比率: 33.2%
- 自己株式の増加: -1兆799億円(前年同期 -9,373億円)
- 有利子負債: 10兆9,798億円(前年同期比 +13,888億円)
④ キャッシュフロー
- 営業キャッシュフロー: 1兆782億円
- 投資キャッシュフロー: -1兆4,451億円
- フリーキャッシュフロー: 1,617億円
- 設備投資: 2兆1,500億円(前年同期比 +4.2%)
→ 投資負担が大きいが、成長に向けた積極的な戦略。
2. 株主還元策
① 配当
- 2024年度の年間配当: 5.20円(前年 5.10円 → 増配)
- 配当性向: 予想50%
- 近年の増配傾向が継続。
② 自社株買い
- 2024年8月7日発表: 最大2,000億円の自己株式取得を決定。
- 2024年12月末時点で 1,617億円を取得済み。
→ 株主還元強化の姿勢を明確にしている。
③ 株主優待
- 100株以上で「dポイント」付与。(継続保有の株主のみに贈呈)
継続保有2年以上3年未満の株主は1,500ポイント、継続保有5年以上6年未満には3,000ポイント付与。
3. 今後の展望
① 成長戦略
- IOWN(オールフォトニクス・ネットワーク)の推進
- 最大800Gbpsの通信サービス提供
- 量子計算プラットフォーム開発
- 5G・6Gのインフラ投資
- 国内外での5G拡充
- 6G開発への取り組み
- 海外市場の拡大
- インドでのデータセンター事業強化
- グローバル市場向けソリューション展開
② 成長性
- 5G・6G、データセンター、AI関連事業の成長余地あり
- 海外展開の加速(特にインド・米国)
- 都市開発(大阪・関西万博関連)での新規事業機会
- ただし、国内通信市場の伸びは鈍化傾向。
③ 割安性
- 予想PER: 約9.4倍(業界平均より低い)
- PBR: 約0.8倍(資産価値の割安感あり)
- 配当利回り: 約3.6%(安定的な高配当)
→ 割安だが成長の鈍化が懸念材料。
4. まとめ
- 収益は過去最高更新も、利益は減少傾向。
- 高配当と自社株買いを強化し、株主還元策は積極的。
- **成長分野(IOWN・5G・データセンター)**に注力するも、国内市場の鈍化が課題。
- バリュエーション的には割安で、長期投資向き。
総合評価: “安定高配当&成長期待銘柄”
- 短期的には利益減少が懸念されるが、長期的な成長ポテンシャルは十分。
- インカムゲイン(配当)目的の投資に適した銘柄。
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